ブランドは、厳しい競争環境の中で勝ち抜くための経営ツールです。
「競合の顔ぶれが様変わりし、新たな勢力に押され気味」「業界全体でお客様離れが加速している」
昨今、業界全体の構造変化の中で、事業の舵取りに悩む経営者や事業担当者のご相談を受ける機会が増えています。世界的な金融危機を一つのきっかけとして、従来の業界・市場の枠組みが大きく崩れ始めています。今日まで相対してきた競合や顧客との関係が、明日以降も同じように続くとは限りません。そうした激しい市場の変化に適応できず、多くの企業経営者やマーケティング責任者が苦悩する姿が見られます。
中でも、市場構造変化の著しいファッション・流通・トイレタリー・食品などの業界では、従来のマーケティング戦略の大きな転換を迫られています。増えすぎた商品ブランドを統廃合してメガブランドをいかに育成するか。既存資産を活用して新規事業開発をいかに進めるか。・・・ブランドの再編成やブランド投資の見直し、即ちブランドポートフォリオの再編によって、構造変化に適応し勝ち抜くことを目指す企業が増えています。市場構造変化と共に生じたポートフォリオの“歪み”を正し、商品/事業/企業ブランドの全体最適化を行うことは、次なる成長への活路を拓く有効な打ち手となるのです。そして、このようなブランドポートフォリオの再編を成功させるためには、3つの重要なポイントがあると考えます。
ブランドポートフォリオ再編を成功に導く3つのポイント
1.「バリューグリッドマップ」で“歪み”の実態を俯瞰する
ブランドポートフォリオの再編には、市場の変化やポートフォリオの歪みの実態を、生活者視点で客観的に把握することが不可欠です。そのためには、まず「バリューグリッドマップ」というツールを用いて、生活者の価値(バリュー)軸で市場を規定します。そして、生活者に求められる価値の大小や、求められる価値と自社ブランドのズレ、自社ブランドと競合ブランドの競争力のギャップ、などの状況を可視化します。これは“生活者視点の市場俯瞰図”とも言うべきものであり、経営者から個別ブランド担当者まで様々な立場の人たちが、全体最適視点でポートフォリオのあるべき姿を検討する際の議論のプラットフォームとしても非常に重要な役割を果たします。
2.既存のブランド資産を基盤に“将来の成長ベクトル”を設定する
さらに、「バリューグリッドマップ」を活用し、市場構造に変化をもたらす生活者の実態を把握し、自社の注力領域をどのようにシフトしていくべきか?を明らかにします。将来の成長に向けた大きな方向感を導き、ポートフォリオ再編の大方針を定めます。その際には、自社が優位性を確立している既存資産を有効活用する視点を持つことで、持続的な成長を実現することが可能となるはずです。
3.“ヨコとタテの視点”からブランドの役割規定を行い“歪み”を正す
最後に、生活者視点の市場俯瞰図に、“ヨコとタテの視点”でブランドポートフォリオを組み上げていきます。
“ヨコの視点”では、自社が保有する複数の商品ブランドが提供する価値の棲み分けを明らかにし、それぞれの役割規定を行います。一方、“タテの視点”では、商品ブランドが企業ブランドに新たな価値を付加する、もしくは企業ブランドが商品ブランドの価値を保証するなど、商品ブランドと企業ブランドの関係性における役割規定を明らかにしていきます。そして、ヨコとタテの視点をクロスさせることで、ポートフォリオ全体の最適化を図ります。
以上が、市場構造変化に柔軟に対応し、次なる成長への活路を拓くためのブランドポートフォリオ再編のポイントです。分析フレームワークの詳細や事例等につきましては、また別の機会でご紹介したいと思います。
博報堂ブランドコンサルティング プロジェクトマネジャー 石田 朋子
(博報堂BCニュースレター 第14号掲載)